昔の私は、資料作成という仕事を少し軽く見ていました。
PowerPointが使えればできる仕事。
見やすく整えて、グラフを貼って、会議までに完成させる。
そのくらいの認識でした。
ですがPMOの仕事を振り返るようになって、その考えは大きく変わりました。
資料作成とは、スライドを作る仕事ではありません。
情報を整理し、相手が判断できる状態を作る仕事だったのです。
PowerPointを作る仕事ではない
資料作成という言葉を聞くと、PowerPointの操作が得意な人を想像することがあります。
もちろん、操作スキルは大事です。見やすい配置、読みやすい文字量、適切な図表。そうしたものがあるだけで、資料の伝わり方は変わります。
ただ、どれだけ見た目がきれいでも、伝わらなければ意味がありません。
逆に、多少見た目が地味でも、意思決定に必要な情報が整理されていれば、その資料は役に立ちます。
資料作成の本質は、PowerPointの操作ではなく、情報整理なのかもしれません。
PMOの資料作成で求められるのは、装飾ではなく、状況を見える形にすることだと思います。今何が起きているのか。どこが遅れているのか。何を決める必要があるのか。そこが伝わる資料でなければ、会議でも判断でも使いにくいはずです。
偉い人は全部読まない
過去の案件を振り返ると、会議参加者が増えるほど資料は厚くなりがちでした。
20ページ、30ページ、場合によっては50ページ。資料としては立派に見えますが、全員が最初から最後まで読んでいるとは限りません。
特に管理職や役員に近い人ほど、見る時間は限られています。
細部まで読んでもらう前提で作った資料は、実際にはほとんど読まれない可能性もあります。
そう考えると、資料で重要なのは「全部書くこと」ではなく、「最初に何を伝えるか」なのだと思います。
最初の1ページで何が起きているのか分かるか。最初の数分で、何を判断してほしいのか伝わるか。そこが弱いと、後ろにどれだけ情報を積んでも、読まれる資料にはなりにくい気がします。
良い資料は結論が先にある
転職活動をしていて、面談でも同じことを感じます。
質問に対して、背景から順番に説明しようとすると、話が長くなります。私も気を抜くとそうなります。
ですが、相手がまず知りたいのは結論です。
資料も同じです。何が問題なのか。今どういう状態なのか。何を決めてほしいのか。そこが先に見えた方が、読む側は理解しやすくなります。
背景や詳細は、その後で補足すればいいのだと思います。
資料作成は、情報を増やす仕事のようでいて、実は情報を削る仕事でもあります。
全部を並べるのではなく、読む人が判断するために必要なものを選ぶ。その取捨選択に、資料を作る人の理解度が出るのだと思います。
誰のための資料なのか
資料作成で難しいのは、読む人によって必要な情報が違うことです。
現場担当者、PM、部長、役員、お客様。それぞれ見たいものが違います。
現場は具体的な作業や原因を見ます。管理者は全体の進捗やリスクを見ます。役員やお客様は、結論や影響を見ます。
だから資料を作る時は、何を書くかより先に、誰に見せる資料なのかを考える必要があると思います。
同じプロジェクトの話でも、相手が変われば資料の形も変わります。現場向けの資料をそのまま役員向けに出しても伝わりにくいですし、逆に役員向けの要約だけでは現場は動けません。
PMOの資料作成は、この間をつなぐ仕事でもあるのだと思います。
現場で起きている細かい情報を、管理者が判断できる形にする。上位者の方針を、現場が動ける形に落とす。そう考えると、資料作成はかなり実務的な翻訳作業に近い気がします。
数字だけでは伝わらない
進捗資料を例にすると、数字だけを並べても状況は伝わりません。
進捗率85%。課題12件。リスク4件。
数字としては分かります。ですが、それが良いのか悪いのかは、数字だけでは判断できません。
85%という進捗率は順調なのか。残り15%に大きな難所が残っているのか。課題12件は多いのか少ないのか。そのうち本当に危ないものはいくつなのか。
数字には、文脈が必要です。
資料作成とは、数字を並べることではなく、数字に意味を与えることなのかもしれません。
今の数字が何を示しているのか。このままだと何が起きるのか。どこに注意すべきなのか。そこまで伝えられて初めて、資料として使えるものになるのだと思います。
PMOは翻訳者に近い
最近思うのは、PMOは翻訳者に近いということです。
現場の言葉、技術者の言葉、管理者の言葉、お客様の言葉。それぞれ少しずつ違います。同じ事実を見ていても、立場によって気にするポイントが変わります。
資料は、その間をつなぐ役割があります。
現場で起きていることを、管理者にも分かる形にする。管理者が気にしていることを、現場にも伝わる形にする。お客様に説明する時には、専門的すぎる言葉を整理して、影響や判断点が分かるようにする。
そう考えると、資料作成は単なる事務作業ではありません。
プロジェクトの中で、情報の形を変えて届ける仕事です。
ここを軽く見ると、資料は作っているのに何も伝わらない、ということが起きるのだと思います。
資料は、作った時点ではまだ完成していない
若い頃は、資料を完成させること自体が目的になっていた気がします。
きれいに整える。抜け漏れなく書く。期限までに提出する。それはそれで大切です。
ですが今は、資料は作った時点ではまだ完成していないのではないかと思うようになりました。
相手が理解できるか。判断できるか。次の行動に移れるか。そこまで含めて、資料の価値が決まるのだと思います。
「PowerPointできます」「資料作成経験があります」だけでは弱い。
どんな相手に、何を伝えるための資料を作っていたのか。そこまで説明できなければ、PMO経験としては伝わりにくいのだと感じています。
おわりに
資料作成という仕事の奥深さは、PowerPointの操作ではありませんでした。
情報を整理すること。結論を伝えること。読む人に合わせて形を変えること。数字に意味を与えること。そして、相手が判断し、動ける状態にすること。
資料作成という言葉は地味です。求人票の中でも、当たり前のように書かれています。
ですが今は、その言葉の裏にある重さを以前より感じるようになりました。
転職活動はまだ途中です。PMOとしてどこまで通用するのかも、まだ分かりません。
ただ、資料作成を単なる作業として見ないこと。
これは、これからPMO案件を見るうえで大事な視点になりそうです。
この記事は
「48歳、転職市場へ戻る」
シリーズの追加記事です。
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