進捗管理は、数字を集める仕事ではなかった

「進捗率は80%です。」

プロジェクトではよく聞く言葉です。

昔の私は、この数字をそのまま信じていました。

でも今は違います。

進捗管理とは数字を集める仕事ではなく、その数字を信用できる状態にする仕事だと思うようになりました。

目次

進捗率は、意外と曖昧

進捗確認では、よく数字が出てきます。

「今どれくらい進んでいますか?」

そう聞くと、

「だいたい80%です」

という返事が返ってくることがあります。

数字だけを見ると、かなり進んでいるように見えます。ですが、その80%が何を意味しているのかは、意外と曖昧です。

作業量の80%なのか。予定していた時間の80%なのか。本人の感覚としての80%なのか。残り20%で本当に終わるのか。それとも、最後の20%に一番時間がかかるのか。

そこを確認しないと、数字だけでは本当の状況は分かりません。

進捗率という数字は便利です。資料にも載せやすいですし、会議でも共有しやすいです。ただ、その数字の基準が曖昧なままだと、順調に見えているだけの可能性があります。

進捗管理で大事なのは、数字そのものよりも、その数字がどう作られているのかを見ることなのだと思います。

「問題ありません」が一番怖いこともある

進捗確認をしていると、よく出てくる言葉があります。

「問題ありません」

一見すると安心する言葉です。ですが、PMOの立場で見ると、少し怖い言葉でもあります。

本当に問題がないのか。まだ問題が見つかっていないだけなのか。本人が問題だと思っていないだけなのか。問題はあるけれど、言い出しにくいだけなのか。

そこを見ないと、「問題ありません」は判断できません。

本当に順調なのか。確認待ちはないのか。他チーム依存はないのか。レビューは間に合うのか。テストは終わるのか。判断が必要なものは残っていないのか。

そうしたことを確認して初めて、「問題ありません」という言葉に意味が出てくるのだと思います。

進捗管理は、報告された言葉をそのまま受け取る仕事ではありません。数字や言葉の裏側に、見えていない遅れや不安がないかを確認する仕事なのだと思います。

遅れていることより、見えていないことが怖い

プロジェクトでは、遅延そのものより、遅延が見えていない方が怖いことがあります。

たとえば、1週間遅れている。でも全員がその事実を知っている。対応策も決まっている。影響範囲も分かっている。

この場合は、まだ動けます。

本当に怖いのは、遅れているのに誰も認識していない状態です。あるいは、みんな薄々気付いているのに、誰も言葉にしていない状態です。

進捗管理は、順調なことを確認する仕事ではなく、危ない兆候を早く見つける仕事なのかもしれません。

進捗が遅れていること自体は問題です。ただ、それ以上に危ないのは、遅れていることが見えていないことです。

見えていれば、手を打てます。見えていなければ、気付いた時にはかなり重くなっていることがあります。

100%完了も確認が必要

少し意外ですが、進捗率100%という数字も注意が必要だと思うようになりました。

開発完了。設計完了。テスト完了。資料作成完了。

そう報告されると、終わったように見えます。

ですが、本当に終わっているのかは確認が必要です。

レビューは終わっているのか。エビデンスはあるのか。関係者は承認しているのか。残タスクはないのか。次工程に渡せる状態なのか。

プロジェクトによっては、「終わったことになっている」だけのケースもあるかもしれません。

進捗管理では、100%という数字そのものより、完了の定義が大事なのだと思います。

何をもって完了とするのか。誰が確認すれば完了なのか。証跡は必要なのか。次の工程に渡せる状態なのか。

ここが曖昧なままだと、100%という数字も安心材料にはなりません。

進捗率の基準がそろっていないと意味がない

最近、POS更改プロジェクトのシミュレーションをしていて、進捗管理について考える機会がありました。

店舗数が多く、対象範囲も広く、複数チームが関わるような大きなプロジェクトでは、進捗率そのものよりも、進捗率の信頼性が重要になります。

たとえば、各チームが「90%」と報告していたとします。

でも、あるチームの90%と、別チームの90%が違う意味なら、その数字を並べても正しく判断できません。

作業が終わったから90%なのか。現地確認まで終わって90%なのか。エビデンス回収まで含めて90%なのか。顧客確認まで済んで90%なのか。

基準がそろっていなければ、数字を集めても比較できません。

だから大規模プロジェクトでは、進捗率を集める前に、進捗率の定義を合わせる必要があります。

最近は、進捗管理の本質はそこにある気がしています。

会議で見るべきなのは、未来の遅延の種

進捗会議では、つい数字に目が行きます。

何%進んでいるのか。予定通りなのか。遅れているのか。完了予定日はいつなのか。

もちろん、それも大事です。

ただ最近は、数字を見るだけでは足りないと思うようになりました。

今一番不安なことは何か。止まっているものはあるか。他チーム待ちはあるか。今週中に判断が必要なものはあるか。予定より遅れそうなものはあるか。

こうした質問の方が、実際には重要なのではないかと思います。

進捗率は、今までの結果です。

でも本当に見たいのは、未来の遅延の種なのかもしれません。

今はまだ遅れていない。でも、このままだと来週止まりそう。今は問題になっていない。でも、誰かが判断しないと後で詰まりそう。

そうした兆候を拾うことが、進捗管理では大事なのだと思います。

進捗管理は、観測に近い

最近思うのは、進捗管理は観測に近いということです。

数字を見る。状況を聞く。違和感を探す。変化を見る。危険信号を見つける。そして必要な人に伝える。

これは、単なる集計作業ではありません。

報告された数字をそのまま並べるだけなら、表を作れば終わります。ですが、実際の進捗管理では、その数字が信用できるのか、どこにズレがあるのか、何が見えていないのかを観測する必要があります。

進捗管理が得意な人は、Excelが得意な人というより、違和感を見つける人なのかもしれません。

80%が動かない。問題なしという言葉が多すぎる。完了と言っているのにエビデンスがない。担当者によって進捗率の基準が違う。

そうした小さな違和感を拾えるかどうかが、進捗管理ではかなり大事なのだと思います。

進捗管理は、強みにも課題にもなる

これまでの経験を振り返ると、私は進捗や課題を整理したり、資料にまとめたり、会議で状況を共有するための準備に関わってきました。

その意味では、進捗管理に近い仕事はしてきたと思います。

ただ、転職活動を通じてPMO案件を見ていると、それだけで十分とは言えないとも感じます。

数字を集める力。状況を聞く力。違和感に気付く力。遅延の兆候を見る力。完了の定義を確認する力。必要な時にPMへ上げる力。

こうした力が必要です。

進捗管理は、自分の経験を活かせる可能性がある領域です。一方で、もっと鍛えなければいけない領域でもあると思っています。

だから今は、「進捗管理できます」と軽く言うより、どの範囲の進捗管理ならできるのか、どこはまだ経験が足りないのかを整理する必要があると感じています。

おわりに

進捗管理という仕事の難しさは、進捗率を集めることだけではありませんでした。

数字を信用できるのか。遅延の兆候はないのか。「問題ありません」の裏に何か隠れていないか。完了の定義はそろっているのか。各チームの進捗率の基準は同じなのか。

そこを確認する仕事でした。

PMO案件を見ていると、進捗管理という言葉は当たり前のように出てきます。ですがその裏には、数字を疑い、現場を観測し、危険信号を見つける仕事があります。

転職活動を続ける中で、進捗管理という言葉の見え方も少し変わってきました。

今はむしろ、「進捗率を集める人」ではなく、「進捗率を信用できる状態にする人」がPMOなのではないかと思っています。

転職活動はまだ途中です。PMOとしてどこまで通用するのかも、まだ分かりません。

ただ、進捗管理を単なる数字集めとして見ないこと。

これは今後PMO案件を見るうえで、大事な視点になりそうです。


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