Kindle出版をやってみて最初に感じたのは、本を書くことよりも、出版することの方が難しいということでした。
出版前の私は、文章さえ書けば本になると思っていました。原稿を書き、修正し、章を整えれば、あとはそのままAmazonに出せる。どこかでそんなイメージを持っていたのだと思います。
しかし実際には、原稿を書き終えたところから、別の作業が始まりました。本を書くことと、本を出版することは別の作業でした。
今回は、初めてKindle出版をしてみて、最初に苦労したことについて書いてみます。
原稿が完成すれば終わりだと思っていた
本を書く作業は、もちろん簡単ではありませんでした。何を書くかを決め、章立てを作り、本文を書き、何度も修正する。途中で構成を変えたくなることもありましたし、これで本当に一冊になるのか不安になることもありました。
それでも、書く作業については、ある程度イメージがありました。文章を書けば前に進みます。修正すれば少し良くなります。大変ではあっても、やるべきことは分かりやすかったのです。
問題は、原稿が完成した後でした。
原稿ができた瞬間、私は「この後どうすればいいんだろう」と思いました。文章を書き終えたのに、本としてはまだ完成していない。そこではじめて、出版には出版の作業があるのだと気づきました。
KDPの画面に圧倒された
Kindle本をAmazonで出すには、Kindle Direct Publishing、いわゆるKDPを使います。
初めてKDPの画面を開いたとき、思った以上に入力項目が多くて少し圧倒されました。タイトル、著者名、説明文、キーワード、カテゴリー、表紙、原稿ファイル、価格、ロイヤリティ設定。ひとつひとつは小さな項目に見えますが、初めてだとどれも判断が必要です。
本を書く前は、こうした作業があることをほとんど意識していませんでした。
特に難しかったのは、説明文やキーワードです。本文は自分の中から出てきた言葉で書けます。しかし、説明文は読者に向けて本の内容を伝える文章です。本文とは違う頭の使い方が必要でした。
「この本は何の本なのか」
「誰に向けて書いたのか」
「読んだ人に何が残るのか」
そうしたことを、短い文章で説明しなければなりません。ここで初めて、自分の本を外側から見る必要が出てきました。
表紙と価格で手が止まった
次に悩んだのが表紙です。
本の内容は自分で書けます。しかし表紙は、文章とは別の判断が必要でした。どんな印象を与えるのか。文字だけでいいのか。画像を使うのか。見た人に何を感じてもらうのか。
本屋で何気なく見ていた表紙には、大きな役割があったのだと気づきました。
表紙は、単なる飾りではありません。読者が最初に見る入口です。中身が良くても、表紙で伝わらなければ手に取ってもらえないかもしれません。そう考えると、なかなか決められませんでした。
価格設定も難しかったです。
高すぎると読まれないかもしれない。安すぎると価値が伝わらないかもしれない。そもそも、自分の文章に値段を付けるという経験がありません。
ここでも、文章を書くこととは別の迷いが出てきました。
本を書くときは、自分の中にあるものを形にしていきます。しかし出版するときは、それを読者にどう届けるかを考えなければなりません。表紙も価格も、その「届け方」の一部なのだと思います。
最後に重かったのは公開ボタンだった
原稿を用意する。表紙を設定する。説明文を書く。価格を決める。カテゴリーやキーワードを入れる。
ひとつずつ作業を進めていくと、最後に公開ボタンが残ります。
ここまで来れば、あとは押すだけです。
でも、その最後のボタンが思った以上に重く感じました。
本当に公開していいのだろうか。誰にも読まれなかったらどうしよう。内容が足りなかったらどうしよう。もっと直した方がいいのではないか。
そう考え始めると、いくらでも不安は出てきます。
出版作業をしていて分かったのは、完璧を待っていたら、いつまでも出版できないということです。もちろん、雑に出せばいいわけではありません。できる範囲で整えることは大事です。
それでも、どこかで区切りを付けなければなりません。
これは転職活動にも少し似ていると思いました。準備は大切です。しかし準備だけでは前に進みません。職務経歴書を直し続けるだけでは面談には進めませんし、出版も原稿を直し続けるだけでは本にはなりません。
最後は、公開するという行動が必要でした。
出版作業そのものが観測になった
最初は、Kindle出版を「本を出す作業」だと思っていました。
しかし実際にやってみると、出版作業そのものが観測対象になっていきました。KDPの画面で迷うこと。表紙を決められないこと。価格に悩むこと。公開ボタンの前で手が止まること。そのひとつひとつが、自分にとって新しい経験でした。
新しいことを覚える。試してみる。うまくいかない。修正する。そしてまた進める。
気づけば、出版した本そのものだけでなく、出版までの過程にも意味があると感じるようになっていました。
本を書くことより、出版したら何が起こるのかの方が気になり始めていたのです。
公開後に読まれるのか。検索されるのか。反応はあるのか。自分はそれをどう受け止めるのか。
その時点で、出版は単なる作業ではなく、自分にとっての観測になっていました。
おわりに
Kindle出版で最初に苦労したことは、文章を書くことではありませんでした。
もちろん、書くことも大変です。しかし私にとって本当に難しかったのは、書いたものを本として外に出すことでした。
KDPの設定、表紙、説明文、価格、公開ボタン。どれも、実際にやってみるまで分からなかった作業です。
そして、その経験を通じて分かったことがあります。
本を書くことと、本を出版することは別の作業です。
文章を書き終えたところがゴールではなく、そこから「どう届けるか」という別の工程が始まります。
初めてのKindle出版は、思った以上に手間がかかりました。迷うことも多かったです。それでも、実際にやってみたことで、出版という作業を自分の経験として観測できました。
この経験は、次の本を作るときにも、ブログを書くときにも、きっと残っていくと思います。
この記事は「48歳、出版する」シリーズの第2話です。
前の記事では、なぜ私が出版することになったのかについて書いています。
次の記事では、出版ボタンを押した日のことについて書いています。
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