PMOが進捗率をそのまま信用してはいけない理由|数字の裏側を確認する方法

プロジェクトの進捗会議では、「現在の進捗率は80%です」「予定どおり90%まで進んでいます」といった報告が行われます。

数字で示されると、状況が分かりやすくなったように見えます。しかし、PMOとして進捗を管理する場合、その数字をそのまま信用するのは危険です。

同じ80%でも、残っている作業の内容によって意味は変わります。簡単な作業が8割終わり、難しい作業が最後に残っていることもあります。担当者によって進捗率の付け方が違い、実際には比較できない数字が並んでいる場合もあります。

進捗率そのものが問題なのではありません。

重要なのは、その数字がどのような基準で作られ、残りの作業にどの程度のリスクがあるのかを確認することです。

この記事では、PMOが進捗率を見る時に注意したい点と、数字の裏側を確認する方法について整理します。

目次

進捗率は客観的な数字とは限らない

進捗率は数字で表示されるため、客観的な情報に見えます。

しかし、実際には担当者の感覚で入力されていることも少なくありません。

ある担当者は、作業に着手した時点で進捗率を20%とします。別の担当者は、着手しただけでは0%のままにするかもしれません。

作業自体が終われば100%とする人もいれば、レビューや承認が完了するまで90%にする人もいます。

このように基準がそろっていなければ、進捗率を並べても正確な比較はできません。

たとえば、二つの作業がどちらも80%と報告されていたとしても、実際の状態は次のように異なる可能性があります。

  • 作業はほぼ終わり、最終確認だけが残っている
  • 簡単な部分だけが終わり、難しい部分が残っている
  • 担当者レビューは終わったが、顧客承認が必要
  • 作業量の8割が終わったと担当者が感覚で判断している
  • 予定工数の8割を消化しただけで、成果物は完成していない

数字が同じでも、残っている作業と完了条件が違えば、プロジェクトへの影響も変わります。

PMOが確認すべきなのは、進捗率だけではなく、その数字が何を表しているのかです。

90%のまま止まり続ける作業に注意する

進捗管理でよく起きるのが、90%まで進んだ作業が、そこからなかなか完了しない状態です。

作業の大部分が終わっているように見えるため、最初は大きな問題として扱われません。しかし、何週間も90%のまま変わらなければ、何かが止まっています。

よくある原因には、次のようなものがあります。

  • レビュー担当者から回答が来ない
  • 顧客の承認を待っている
  • 一部の仕様が決まっていない
  • 修正指摘が繰り返し発生している
  • 他チームの作業完了を待っている
  • 担当者が別の作業を優先している
  • 完了条件が曖昧になっている

この場合、残り10%が小さいとは限りません。

むしろ、最後に残った部分が最も難しく、関係者の判断や外部要因に依存していることがあります。

PMOとしては、90%という数字を見るだけでなく、次の点を確認します。

  • 何が終わっていて、何が残っているのか
  • 残作業の担当者は誰か
  • 完了するために誰の判断が必要か
  • いつまでに回答や承認が必要か
  • 遅れた場合、後工程へどのように影響するか

進捗率が高いから安心するのではなく、高い進捗率のまま動かない作業を早めに見つけることが重要です。

工数を使った割合と作業の完成度は違う

進捗率を、予定工数に対してどれだけ時間を使ったかで計算する場合があります。

たとえば、予定工数が10日で、8日間作業したため進捗率80%と報告する方法です。

この方法は計算しやすい一方で、実際の成果物の完成度とは一致しないことがあります。

8日間作業していても、想定外の問題が発生し、作業が半分しか終わっていない可能性があります。逆に、効率よく進み、予定より早く完成する場合もあります。

予定工数の消化率は、どれだけ時間を使ったかを示す数字です。

一方、進捗率は、作業や成果物がどの程度完成しているかを示す必要があります。

この二つを混同すると、「時間は使っているのに成果物が完成していない」という状態を見落とします。

PMOが進捗を確認する時は、次の三つを分けて見ると状況を把握しやすくなります。

  • 予定していた作業量
  • 現在までに投入した工数
  • 実際に完成した成果物や作業

工数を予定どおり使っていることと、作業が予定どおり進んでいることは同じではありません。

簡単な作業から終わらせると進捗率は高く見える

複数の作業をまとめて進捗率を計算する場合、簡単な作業を先に終わらせると、数字は早く上がります。

たとえば、10個の作業のうち8個が完了すれば、件数だけで見れば進捗率は80%です。

しかし、完了した8個が小さな作業で、残っている2個が難しい作業だった場合、実際の作業量は半分以上残っている可能性があります。

件数だけで進捗率を計算する時は、作業ごとの大きさや難易度が同じであることが前提になります。

実際のプロジェクトでは、作業量が均等であることはほとんどありません。

そのため、進捗を確認する際は、単純な完了件数だけでなく、残っている作業の内容を確認します。

  • 残作業の工数はどの程度か
  • 技術的に難しい作業が残っていないか
  • 外部の判断や情報に依存していないか
  • 過去に遅れやすかった工程ではないか
  • 後工程への影響が大きい作業ではないか

進捗率が高くても、重要な作業が最後に残っていれば、プロジェクトのリスクは高いままです。

「予定どおり」という報告も基準を確認する

進捗会議では、「予定どおり進んでいます」という報告もよく使われます。

この言葉も、そのまま受け取るのは危険です。

担当者にとっての予定どおりが、プロジェクト全体の予定どおりとは限らないからです。

担当者は自分の作業期限に間に合うと考えていても、後工程の準備期間を圧迫している場合があります。成果物の提出予定日は守れても、レビューや修正の期間が足りなくなることもあります。

「予定どおり」と報告された時は、次の内容を確認します。

  • どの予定に対して順調なのか
  • 完了予定日は変わっていないか
  • レビューや承認の期間を含んでいるか
  • 現在困っていることはないか
  • 後工程へ渡す条件を満たせるか
  • 遅れにつながる前提条件は残っていないか

単に「問題ありませんか」と聞くと、多くの場合は「問題ありません」と返ってきます。

具体的な完了予定日や残作業を確認することで、初めて実際の状況が見えてきます。

赤信号になる前の黄色信号を拾う

進捗表では、予定どおりを緑、注意が必要な状態を黄色、遅延を赤で表示することがあります。

しかし、遅れが確定してから赤に変えても、対応できる時間が残っていない場合があります。

PMOが意識したいのは、赤信号になった作業を報告することだけではなく、その前に出ている黄色信号を見つけることです。

たとえば、次のような状態は、まだ遅延ではなくても注意が必要です。

  • 担当者から進捗回答が遅れるようになった
  • 完了予定日が近いのに成果物が見えていない
  • 同じ確認事項が何度も持ち越されている
  • レビュー担当者が決まっていない
  • 前提となる仕様が確定していない
  • 担当者が複数の重要作業を抱えている
  • 進捗率が数回の報告で変わっていない
  • 「ほぼ終わっています」という曖昧な表現が増えた

これらは単独では大きな問題でないこともあります。

しかし、複数が重なっている場合は、遅れへつながる可能性が高くなります。

PMOは、遅延が発生した事実を集めるだけでなく、遅延しそうな兆候を確認し、早めに共有する必要があります。

進捗確認では残作業を具体的に聞く

「進捗率は何%ですか」と聞くだけでは、十分な情報を得られません。

数字を確認した後に、「残っている作業は何ですか」と聞くことで、実際の状態が見えやすくなります。

進捗確認では、次のような質問が役立ちます。

  • 現在までに何が完了していますか
  • 残っている作業は何ですか
  • 次に行う作業は何ですか
  • 完了予定日はいつですか
  • 完了のために必要な情報はそろっていますか
  • 誰かの確認や承認を待っていますか
  • 現時点で不安な点はありますか
  • 予定日を守れない可能性はありますか
  • 遅れた場合、どの作業に影響しますか

これらを毎回すべて質問する必要はありません。

進捗率が変わっていない作業、期限が近い作業、他工程への影響が大きい作業など、リスクの高いものを中心に確認します。

重要なのは、担当者を問い詰めることではありません。

問題が大きくなる前に、作業を止めている要因を見つけることです。

担当者が悪いと決めつけない

進捗が遅れていると、担当者の作業が遅いと考えてしまうことがあります。

しかし、実際には担当者だけでは解決できない原因もあります。

必要な仕様が決まっていない、レビュー担当者が不在、他チームから情報が来ない、優先順位の高い別作業を依頼されているなど、体制や判断の問題で止まっている場合があります。

その状態で担当者へ進捗率の改善だけを求めても、作業は進みません。

PMOが確認したいのは、誰の責任かだけではなく、何が作業を止めているのかです。

  • 担当者自身の作業が遅れている
  • 必要な情報を待っている
  • 判断者の回答を待っている
  • 作業量の見積もりが不足していた
  • 優先順位が変わった
  • 人員が不足している
  • 手順や完了条件が分からない
  • 他工程の遅れに影響されている

原因によって必要な対応は異なります。

担当者へ依頼すべきこともあれば、PMや責任者へ判断を求めるべきこともあります。別チームと調整しなければならない場合もあります。

進捗率を管理する目的は、担当者を評価することではなく、プロジェクトを前へ進めることです。

進捗率の基準をそろえる

担当者ごとに数字の付け方が違う場合は、進捗率の基準をそろえる必要があります。

ただし、すべての作業を細かくパーセントで管理すればよいとは限りません。

作業内容によっては、段階で管理する方が分かりやすいことがあります。

たとえば、資料作成であれば次のように分けられます。

  • 未着手
  • 作成中
  • 初稿完成
  • レビュー中
  • 指摘対応中
  • 承認待ち
  • 完了

システム開発やテストであれば、成果物や件数を基準にする方法もあります。

  • 設計対象50件のうち30件完了
  • テストケース200件のうち120件実施
  • 店舗100拠点のうち60拠点作業完了

このような客観的な件数が使える場合は、担当者の感覚だけで進捗率を決めるよりも状態が分かりやすくなります。

一方で、調査や検討のように件数で測りにくい作業もあります。

その場合は、次の成果物や判断ポイントを決めておきます。

  • 調査結果の一覧が完成した
  • 選択肢を整理した
  • 関係者レビューを実施した
  • 方針が決定した
  • 次工程へ引き渡した

進捗率の基準をそろえる目的は、数字を細かくすることではありません。

関係者が同じ状態を同じように理解できるようにすることです。

進捗表と課題表を分けすぎない

進捗の遅れには、何らかの課題が隠れていることがあります。

しかし、進捗表と課題表が別々に管理されていると、両者の関係が見えにくくなります。

進捗表では作業が遅れているのに、課題表には何も登録されていない状態が起こります。

逆に、重要な課題が登録されていても、どの工程へ影響するのか分からない場合もあります。

PMOとしては、遅れている作業と課題を関連づけて確認します。

  • この遅れの原因は課題として登録されているか
  • 課題が解決すれば作業は再開できるか
  • 解決予定日は完了予定日に間に合うか
  • この課題は他の作業にも影響するか
  • 誰の判断があれば進むのか

進捗率だけを追うと、数字が変わらない事実しか分かりません。

課題と結びつけることで、なぜ止まっているのか、次に何をすべきなのかが見えてきます。

【関連記事:課題管理は、表を更新する仕事ではなかった】

報告用の数字と現場管理用の情報を分ける

経営層や顧客への報告では、細かな作業をすべて説明することはできません。

そのため、全体進捗率や工程別の達成率など、数字をまとめて報告する必要があります。

一方、現場の管理では、全体の数字だけでは対応できません。

どの作業が遅れ、何が原因で、誰の判断を待っているのかという具体的な情報が必要です。

PMOは、報告用の数字と、現場を動かすための情報を分けて考える必要があります。

報告資料では、次のような内容を示します。

  • 全体の進捗状況
  • 予定との差
  • 重要な遅延
  • 主要な課題
  • 判断が必要な事項
  • 今後の見通し

現場管理では、さらに細かな内容を確認します。

  • 個別作業の残作業
  • 担当者
  • 完了予定日
  • 前提条件
  • レビューや承認の状況
  • 次に行う対応
  • 他作業への影響

上位報告の数字だけを整えても、現場の問題は解決しません。

反対に、細かな情報だけを並べても、責任者は全体を判断できません。

PMOには、現場の具体的な情報を、判断できる形へまとめる役割があります。

進捗率を信用できる状態を作る

進捗率をそのまま信用してはいけないからといって、数字が無意味なわけではありません。

基準がそろい、完了条件が明確で、定期的に確認されていれば、進捗率はプロジェクトの状況を把握する有効な情報になります。

進捗率を信用できる状態にするためには、次のような仕組みが必要です。

  • 完了条件を明確にする
  • 進捗率の付け方をそろえる
  • 更新頻度を決める
  • 残作業を確認する
  • レビューや承認を進捗に含める
  • 遅れの原因を課題として管理する
  • 重要な作業は成果物でも確認する
  • 同じ数字が続く作業を重点的に見る

数字を疑うことが目的ではありません。

数字の意味を確認し、関係者が同じ基準で状況を判断できるようにすることが目的です。

まとめ

PMOが進捗率を見る時は、数字だけをそのまま信用しないことが重要です。

同じ80%でも、残作業や完了条件によって意味は異なります。予定工数の8割を使っただけかもしれませんし、簡単な作業だけが終わり、難しい作業が残っている可能性もあります。

特に注意したいのは、次のような状態です。

  • 進捗率の基準が担当者ごとに違う
  • 90%のまま長期間止まっている
  • 工数消化率を進捗率として扱っている
  • 難しい作業が最後に残っている
  • レビューや承認を完了条件に含めていない
  • 「予定どおり」の根拠が曖昧
  • 遅延の原因が課題として管理されていない

進捗確認では、何%進んだかだけでなく、何が終わり、何が残り、何が作業を止めているのかを確認します。

PMOの役割は、数字を集めてきれいな表を作ることではありません。

数字の裏側にある残作業、課題、判断待ち、外部依存を見つけ、関係者が早めに対応できる状態を作ることです。

進捗率を疑い続けるのではなく、進捗率を信用できる管理方法へ整える。

それが、PMOに求められる進捗管理の一つだと思います。

PMOの仕事については、次の記事でも整理しています。

【関連記事:PMOがプロジェクト参画時に最初に確認したいこと

【関連記事:進捗管理は、数字を集める仕事ではなかった

【関連記事:48歳で転職活動をして感じた、PMO案件の難しさ

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