転職活動でPMO案件を見ていると、同じ「PMO」という職種名でも、仕事内容が大きく違うことに気付きます。
進捗表や課題表を更新する補佐的な役割もあれば、顧客との調整、ベンダー管理、会議運営、品質管理、経営層への報告まで求められる案件もあります。なかには、実質的にはプロジェクトマネージャーに近い仕事を、PMOという名前で募集している案件もありました。
私はこれまで、PMやPLの下で進捗、課題、会議、資料、関係者調整などを支援する仕事を経験してきました。
そのため転職活動では、単に「PMO経験があります」と伝えるのではなく、どこまで担当してきたのか、募集されている案件で何を求められているのかを細かく確認する必要がありました。
この記事では、48歳で転職活動をする中で感じた、PMO案件を選ぶ難しさについて整理します。
PMOという名前だけでは仕事内容が分からない
PMOは、プロジェクトを円滑に進めるための支援組織や役割を指します。
ただし、実際の仕事内容は案件によってかなり違います。
求人や案件情報には、次のような業務がPMOとしてまとめて書かれていることがあります。
- 進捗管理
- 課題管理
- 会議運営
- 議事録作成
- 資料作成
- 品質管理
- リスク管理
- ベンダー調整
- 顧客折衝
- 要員管理
- 予算管理
- プロジェクト計画の策定
この中には、PMO補佐として担当しやすい仕事もあれば、PMやプロジェクト責任者に近い仕事も含まれています。
進捗管理という言葉一つを取っても、各担当者から数字を集めて一覧へ反映する仕事と、遅延原因を分析して対応方針を提案する仕事では、求められる経験が違います。
PMO案件を見る時は、職種名ではなく、実際にどの作業をどの立場で担当するのかを確認しなければなりません。
PMO補佐とPMOリーダーでは責任の範囲が違う
私が自分に近いと感じているのは、PMやPLの下で動くPMO補佐です。
具体的には、進捗状況の確認、課題表の更新、会議資料の作成、議事録、関係者への確認、報告内容の整理などを担当する立場です。
一方、PMOリーダーや統括PMOになると、プロジェクト全体の管理方針を決めたり、複数チームを横断して判断したり、顧客や経営層へ報告したりする役割が増えます。
似た名称でも、責任の範囲は大きく異なります。
転職活動では、「PMO経験があるなら、プロジェクト全体を管理できますか」と見られる可能性があります。
しかし、PMの下で進捗を整理していた経験と、プロジェクト全体の責任者として意思決定をしていた経験は同じではありません。
経験を大きく見せれば面談には通りやすくなるかもしれませんが、実際に参画した後、自分の経験を超える役割を任されれば苦しくなります。
40代後半の転職では、経験を広く見せるよりも、どこまでなら安定して対応できるかを正確に伝える方が重要だと感じました。
【関連記事:PMO補佐という、自分に近い立ち位置】
「進捗管理ができます」だけでは足りない
PMO案件の面談では、進捗管理や課題管理の経験について聞かれます。
ただし、「進捗管理を担当していました」という回答だけでは、相手は担当範囲を判断できません。
進捗管理には、さまざまな段階があります。
- 担当者から進捗を回収する
- 進捗表へ反映する
- 未回答者へ確認する
- 遅れている作業を特定する
- 遅延理由を確認する
- PMや会議へ報告する
- 対応方針を関係者と調整する
- スケジュール変更を管理する
自分がどこまで担当していたのかを説明できなければ、経験の中身が伝わりません。
課題管理も同じです。
課題表を更新しただけなのか、担当者や期限を確認したのか、回答が来ない場合に再確認したのか、上位者へのエスカレーションまで行ったのかで、役割は変わります。
PMO案件では、業務名よりも、その中でどのように動いていたのかを説明する必要があります。
【関連記事:進捗管理は、数字を集める仕事ではなかった】
【関連記事:課題管理は、表を更新する仕事ではなかった】
会議運営や資料作成も単純な事務ではない
PMO案件では、会議運営や資料作成が業務に含まれることがあります。
一見すると、日程調整、会議招集、議事録作成、資料の整形など、事務的な仕事に見えるかもしれません。
しかし、実際にはプロジェクトの状況を理解していなければ対応できない部分があります。
会議運営では、誰を呼ぶかだけでなく、何を確認し、何を決める会議なのかを整理する必要があります。
会議後には、決定事項、未決事項、担当者、期限を明確にし、次の行動につなげなければなりません。
資料作成でも、情報をきれいに並べるだけでは不十分です。
どこが遅れているのか、何を判断する必要があるのか、誰が対応するのかを読み手が理解できる形へ整理する必要があります。
こうした業務は地味に見えますが、プロジェクトを止めないためには重要です。
PMO案件の難しさは、作業そのものより、作業の目的を理解し、関係者が動ける状態を作ることにあると感じます。
【関連記事:PMOの会議運営は、日程調整だけの仕事ではなかった】
【関連記事:資料作成は、きれいに整える仕事ではなかった】
案件情報だけでは現場の実態が見えにくい
PMO案件の募集要項には、業務内容が短くまとめられていることがあります。
たとえば、「進捗・課題管理、会議運営、各種調整」と書かれていても、実際の負荷は分かりません。
進捗管理の対象が一つのチームなのか、複数ベンダーを含む大規模プロジェクトなのかでも難易度は違います。
会議運営も、週に一度の定例会だけなのか、複数会議を毎日管理するのかによって負担が変わります。
各種調整という言葉も幅が広く、担当者への確認程度の場合もあれば、顧客とベンダーの間に入って合意形成を進める場合もあります。
そのため面談では、次のような点を確認する必要があります。
- プロジェクト全体の規模
- PMOチームの人数
- 自分の上にPMやリーダーがいるか
- 管理対象となるチーム数
- 担当する会議の数と頻度
- 進捗や課題の管理方法
- 顧客との直接調整があるか
- ベンダーへの指示や管理があるか
- 既存のルールや資料があるか
- 参画後に新しく仕組みを作る必要があるか
求人票だけでは分からない部分を、面談でどこまで確認できるかが重要になります。
体制が整っていない案件ほどPMOの負担が大きい
PMOが必要になるプロジェクトは、すでに何らかの管理上の課題を抱えていることがあります。
進捗が見えない、課題が整理されていない、会議が多いのに決定事項が残らない、チーム間の情報共有が不足しているといった状態です。
そのような現場へ入る場合、既存の管理方法に従うだけではなく、ルールや資料を整えることから始める可能性があります。
進捗表の形式が統一されていない。
課題表が更新されていない。
担当者や期限が曖昧になっている。
会議ごとに議事録の形式が違う。
誰が最終判断するのか分からない。
こうした状態では、PMOの仕事量は一気に増えます。
ただ表を作れば解決するわけではありません。関係者へ管理方法を説明し、協力を得て、定着するまで運用する必要があります。
案件情報に「PMO支援」とだけ書かれていても、整った現場を支援するのか、混乱した現場を立て直すのかで、仕事の難易度は大きく違います。
権限がないのに調整責任だけを求められることがある
PMOは、プロジェクトを管理する立場に見えます。
しかし、実際には関係者へ直接命令できる権限を持っていないことも多くあります。
進捗回答が来ない場合でも、担当者の上司ではないため、強制的に回答させることはできません。
課題の対応が進まない場合も、PMO自身が最終判断できるとは限りません。
それでも、進捗を集め、課題を更新し、遅れを報告する責任は求められます。
ここにPMOの難しさがあります。
権限が限られている中で、相手へ協力を依頼し、必要な情報を集め、判断できる人へつなぐ必要があります。
単に強く催促すればよいわけではありません。相手の状況を確認し、なぜ情報が必要なのかを説明し、回答しやすい形にすることも必要です。
PMOには、管理表を扱う能力だけでなく、関係者との距離を調整する力が求められます。
何でもPMOへ集める現場には注意が必要
役割分担が曖昧な現場では、本来ほかの担当者が行うべき仕事までPMOへ集まることがあります。
資料作成、会議招集、進捗確認、課題管理に加えて、問い合わせ対応、データ集計、手順書作成、現場への説明、スケジュール調整などが次々と追加される状態です。
個別の作業は対応できても、すべてを一人で抱えれば、本来重要な進捗や課題の管理ができなくなります。
PMOはプロジェクト全体を支援する立場だからこそ、仕事の範囲が広がりやすい職種です。
そのため、面談では業務内容だけでなく、役割分担も確認する必要があります。
- PMが担当する範囲
- PMOリーダーが担当する範囲
- 自分が担当する範囲
- 各チームのリーダーが管理する範囲
- 資料やデータの作成元
- 課題を最終判断する人
この境界が曖昧な案件では、参画後に業務が際限なく増える可能性があります。
PMO案件は技術力がなくても簡単にできる仕事ではない
PMOは、プログラミングを直接行わないことがあります。
そのため、技術力がなくてもできる仕事と思われることがあります。
しかし、技術を深く扱わないことと、仕事が簡単であることは別です。
PMOは、複数の担当者が話している内容を理解し、進捗や課題として整理する必要があります。
システムの詳細をすべて理解する必要はなくても、何が遅れているのか、その遅れがどこへ影響するのかを把握できなければなりません。
分からない言葉が出た時には、調べたり、担当者へ確認したりする必要があります。
また、進捗表、課題表、会議資料、議事録など、さまざまな情報の整合性を保つ必要もあります。
高い専門技術の代わりに、情報整理、確認、文書化、調整、継続的な管理の精度が求められる仕事です。
自分の経験より少し上の案件をどう判断するか
転職活動では、自分の経験と完全に一致する案件ばかりではありません。
経験より少し上の役割が含まれる案件へ挑戦することで、仕事の幅が広がる可能性もあります。
一方で、あまりにも経験から離れた役割を引き受けると、参画後に対応できなくなる危険があります。
私が案件を見る時は、求められる業務を次の三つに分けて考えます。
- これまで経験しており、すぐ対応できる仕事
- 近い経験があり、確認しながら対応できる仕事
- 経験がなく、参画直後から一人で任されると難しい仕事
一つ目と二つ目が中心であれば、挑戦できる可能性があります。
しかし三つ目が業務の中心で、教えてもらえる体制もなければ、慎重に判断する必要があります。
40代後半の転職では、成長の機会を避ける必要はありません。
ただし、収入や肩書きだけで判断せず、現場で本当に役割を果たせるかを考える必要があります。
PMO案件を見る時に確認したいこと
PMO案件へ応募する際は、仕事内容を具体的に確認することが重要です。
私が確認したいと考えているのは、主に次の項目です。
- PMO補佐、担当PMO、PMOリーダーのどの立場か
- PMやPLの指示を受けて動くのか
- 自分で管理方法を設計する必要があるか
- 進捗管理の対象範囲
- 課題管理で求められる対応範囲
- 会議の数と自分の担当範囲
- 資料作成の種類と提出先
- 顧客折衝の有無
- ベンダー管理の有無
- チーム構成とPMOの人数
- 既存の管理ルールやテンプレートの有無
- 引き継ぎ期間があるか
- 参画直後に求められる成果
- 残業や繁忙期の状況
これらをすべて面談で質問できるとは限りません。
それでも、自分にとって重要な点を事前に整理しておけば、案件名や単価だけで判断することを防げます。
PMO案件の難しさは、つなぎ目を扱うことにある
PMOの仕事を考える中で、特に難しいと感じるのは、部署や担当者の間にある「つなぎ目」を扱うことです。
各担当者が自分の作業を進めていても、チーム間の認識がずれていれば、プロジェクト全体では問題が起こります。
一方のチームでは完了したと思っていても、次のチームが必要とする条件を満たしていないことがあります。
担当者同士では分かっているつもりでも、決定事項が記録されていなければ、後から認識が食い違うこともあります。
PMOは、個々の作業そのものを行うのではなく、その間にある情報や判断をつなぎます。
何が決まっているのか。
何が未決定なのか。
次に誰が動くのか。
どこで判断が止まっているのか。
こうしたことを見える状態にするのがPMOの役割です。
作業と作業、人と人、部署と部署の境界には、情報が抜けやすい部分があります。
PMO案件の難しさは、その見えにくい部分を扱うことにあるのだと思います。
まとめ
48歳で転職活動をして感じたPMO案件の難しさは、同じ職種名でも役割と責任範囲が大きく違うことでした。
PMO案件を見る時は、次の点を確認する必要があります。
- PMO補佐なのか、リーダーや統括に近い役割なのか
- 進捗管理や課題管理でどこまで求められるのか
- 会議運営や資料作成の範囲
- 顧客折衝やベンダー管理の有無
- プロジェクトとPMOチームの規模
- 管理体制がすでにあるのか、一から作るのか
- 自分の権限と責任のバランス
- 経験より大きく背伸びする案件ではないか
PMOは、表を更新したり会議を設定したりするだけの仕事ではありません。
プロジェクトの状況を整理し、関係者の間にある情報や判断をつなぎ、次に何をすべきかを見える状態にする仕事です。
そのため、技術職とは別の難しさがあります。
転職活動では、PMOという職種名だけで判断せず、自分がどの立場で、何を任され、誰の下で動くのかを確認する必要があります。
40代後半では、できることを必要以上に広く見せるより、自分が安定して担える役割を明確にする方が重要です。
PMO案件の難しさを理解した上で、自分の経験が使える場所を選ぶことが、長く働くための条件になるのだと思います。
40代後半の転職活動全体については、次の記事にまとめています。

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