介護職を経験して見えたこと

介護職を選んだ理由については、前回の記事で書きました。

今回は、実際に介護職を経験して見えたことについて書いてみます。

介護職に就く前の私は、介護についてほとんど知りませんでした。ニュースやテレビで見聞きする程度で、現場で何が起きているのかは分かっていなかったと思います。

実際に働いてみると、想像していたものとはかなり違いました。

介護職は、単に誰かの生活を手伝う仕事ではありませんでした。人の生活、人の不安、人の変化を近くで見る仕事でした。

そしてその経験は、後になってIT業界へ戻ろうと考える時にも、自分の中で大きな意味を持つようになりました。

目次

「できること」は当たり前ではなかった

介護の現場で最初に感じたのは、自分が普段当たり前にやっていることは、決して当たり前ではないということでした。

朝起きること。歩くこと。着替えること。食事をすること。トイレに行くこと。私たちは普段、そうした行動をあまり意識せずに行っています。

しかし介護の現場では、そのひとつひとつが支援の対象になります。

少し立ち上がるだけでも不安がある人がいます。食事をするにも見守りが必要な人がいます。トイレに行くことが大きな負担になる人もいます。

それまで自分が当たり前だと思っていた生活動作は、決して当たり前ではありませんでした。

人が生活するということの重みを、私は介護職を通じて初めて実感しました。

正解が一つではない仕事だった

ITの仕事では、正しい設定、正しい手順、正しい操作があります。もちろん例外はありますが、比較的答えが明確な場面も多いです。

一方で、介護には絶対的な正解がありませんでした。

同じ言葉をかけても、安心する人もいれば、不安になる人もいます。同じ対応をしても、ある人には合っていて、別の人には合わないことがあります。

利用者さんごとに生活歴も、考え方も、体調も、感じ方も違います。

だから毎日が調整でした。

この感覚は、あとから考えるとPMOの仕事にも少し似ているように思います。

PMOも、単に決まった手順を進めるだけではありません。関係者ごとに見ているものが違い、立場も違い、優先順位も違います。その中で情報を整理し、認識のズレを減らし、物事が前に進むように調整していく仕事です。

介護職とPMOはまったく別の仕事です。

それでも、人と人の間に入り、状況を見て、相手に合わせて調整するという意味では、どこか重なる部分があると感じました。

相手が見ている世界は、自分とは違う

介護をしていて強く感じたことがあります。

それは、自分が見ている世界と、相手が見ている世界は違うということです。

こちらは良かれと思って行動しても、相手にはそう伝わらないことがあります。逆に、何気ない一言で安心してもらえることもあります。

同じ部屋にいて、同じ時間を過ごしていても、見えているものや感じているものは人によって違います。

これは、頭では分かっていたつもりでした。

でも、介護の現場ではそれを毎日のように感じます。

相手の言葉だけを見るのではなく、表情や動き、いつもとの違いを見る。急いで結論を出すのではなく、相手が何を感じているのかを考える。

そうした経験は、以前の自分には足りなかったものかもしれません。

IT業界にいた頃も、関係者との調整はありました。ですが、介護職を経験したことで、人によって見ている世界が違うということを、以前よりも実感を持って考えるようになりました。

効率だけでは測れない価値がある

IT業界にいると、効率化、自動化、標準化という言葉をよく考えます。

それはとても重要です。作業を効率化し、ミスを減らし、誰がやっても一定の品質になるようにすることには大きな意味があります。

ですが、介護の現場では、効率だけでは測れない価値がありました。

利用者さんとの会話。安心感。信頼関係。少し時間をかけることで生まれる落ち着き。

そうしたものは、数字では表しにくいものです。

もちろん、介護の現場でも効率は必要です。人手不足の中で、限られた時間で多くのことをしなければなりません。

それでも、すべてを効率だけで判断すると、大事なものを見落としてしまうことがあります。

この感覚は、ITの仕事に戻ったとしても忘れたくないと思っています。

システムも、サービスも、最終的には人のために存在しています。効率化や標準化は大切ですが、その先にいる人を見失ってはいけない。

介護職を経験したことで、その当たり前のことを改めて考えるようになりました。

自分自身にも小さな変化があった

介護職を経験したことで、自分自身も少し変わった気がします。

以前より、人の話を聞くようになりました。急いで結論を出そうとしなくなりました。相手の事情を考えることも増えました。

もちろん、大きく人格が変わったわけではありません。

それでも、小さな変化は確かにありました。

相手がすぐに答えられない時、少し待つこと。自分の都合だけで判断しないこと。表面に出ている言葉だけで決めつけないこと。

そうした感覚は、介護の現場で少しずつ身についたものだと思います。

そしてこの変化は、今後IT業界へ戻るとしても無駄にはならないと感じています。

PMOやQAの仕事でも、人の話を聞き、状況を整理し、必要な情報を次の行動につなげることは大切です。

介護職で得た経験は、直接的なITスキルではありません。

でも、現場を見る力や、人を見る視点として残っていると思います。

介護職は簡単な仕事ではなかった

一方で、介護職の大変さも実感しました。

体力が必要です。夜勤もあります。人手不足の中で働くこともあります。責任も重いです。

人と関わる仕事だからこそ、精神的に疲れる場面もあります。理想だけでは続けられない仕事だと思いました。

介護職は、外から見ていた時よりもずっと複雑で、難しい仕事でした。

だからこそ、介護職を簡単な仕事のようには語れません。

私にとって介護職は、ずっと続けるには難しさもある仕事でした。ただ、その経験をしたこと自体は、決して無駄ではありませんでした。

むしろ、介護職を経験したからこそ、以前のIT業界での仕事を違う角度から見直せるようになりました。

振り返って思うこと

介護職を経験して見えたものは、資格や技術だけではありませんでした。

一番大きかったのは、人を見る視点です。

できることは当たり前ではないこと。正解が一つではないこと。相手が見ている世界は自分とは違うこと。効率だけでは測れない価値があること。

こうしたことを、私は介護職を通じて学びました。

そしてその経験は、IT業界へ戻ろうと考える今、自分の中で意味を持ち始めています。

IT業界に戻れば、またシステム、進捗、課題、品質、資料、会議といった言葉が中心になります。

それでも、その先には必ず人がいます。

システムを使う人。判断する人。困っている人。情報を受け取る人。現場で対応する人。

介護職を経験したことで、そのことを以前よりも意識できるようになった気がします。

おわりに

介護職を経験して見えたものは、たくさんあります。

それは単なる職歴ではありませんでした。

人の生活を見る経験であり、人との関わり方を考える経験であり、自分自身の向き不向きを見直す経験でもありました。

この経験が、今後IT業界へ戻った時にどのように活きるのかは、まだ分かりません。

ですが、無駄な経験ではなかったと今は感じています。

介護職を経験したからこそ、もう一度IT業界で何ができるのかを考えるようになりました。

次回は、なぜ私が再びIT業界へ戻ろうと思ったのかについて書いてみたいと思います。

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